勉強と睡眠の関係、お教えします!

2021.07.11
小林 大介
こんにちは! 家庭教師のファミリー認定プロ教師の小林です。
食後の授業中や睡眠時間を削って夜遅くまで勉強をしたとき、途中で眠くなった経験は誰にでもあるはず。
特にテストや受験が迫ると、勉強時間を確保しようと睡眠が不規則になりがちです。
しかし、やみくもに睡眠時間を削って勉強時間を増やしても学習効率は上がりません。
きちんとお子さま一人ひとりに合った睡眠をとることが効率を上げる近道にもなります。
今回は、勉強と睡眠の関係についてお話します。
勉強には睡眠が不可欠
睡眠は身体と心、頭の休息をとるだけでなく、様々な作用があることがわかってきました。
睡眠の役割と睡眠不足による悪影響について見ていきましょう。
睡眠の3つの役割とは?
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。
レム睡眠は「体は休んでいるが脳は覚醒している状態」、ノンレム睡眠は「体も脳も休んでいる状態」です。
人間はこの2種類の睡眠を繰り返して眠っており、睡眠時間全体の長さにもよりますが、平均的な7時間睡眠では一日に3~4サイクルを繰り返していると考えられています。
それぞれの睡眠には次のような役割があります。
①記憶の整理
人間は脳内の大脳皮質に記憶を蓄積しています。その蓄積活動をスムーズにするのが、睡眠後半の浅いノンレム睡眠です。
まず、ノンレム睡眠はその性質からさらに2つに細分化されます。
睡眠直後のノンレム睡眠は体を休めることに専念し、必要のない情報を消去、睡眠後半のノンレム睡眠は一部の脳が活動し、必要な情報=記憶を固定すると考えられています。
「記憶の固定」とは浅いノンレム睡眠によって、新しい記憶と大脳皮質の過去の記憶が結びつけられることを指します。
そして、レム睡眠中に記憶を整理し、大脳皮質に蓄積された記憶同士も関連づけ記憶を引き出しやすくします。
なお、一日のレム睡眠の長さにも差があり、睡眠最初のレム睡眠は数分ですが、就寝の最後には30分程度のレム睡眠になります。
これらをふまえて、いい睡眠をとり記憶の固定と整理を何度も繰り返すことが、記憶を定着させることにつながるとされています。
②脳の休息・心身の休息
脳は1日過ごすと体と同様に疲労します。特に勉強や運動をしていなくても、生活をしているだけで様々な思考、活動、感情が発生しますので、その疲労を回復させるために、睡眠は不可欠です。
睡眠時は、まず脳と体を一気に休息(ノンレム睡眠)→その後脳だけ活動・情報を整理→再び脳も眠る・起きる直前は浅いレム睡眠、というサイクルになっており、これは効率よく休息を図るためだと考えられています。
③脳の発達・心身の発達
睡眠中には成長ホルモンが分泌されます。
体の発達だけでなく、脳機能を正常に稼働させ、発達させるためには適切な睡眠が必要です。
睡眠不足の悪影響
勉強する際使用される脳の器官は大脳皮質・大脳辺縁系です。
睡眠不足になると大脳皮質の記憶機能が低下し、以下のような悪影響を及ぼします。
①集中力低下
注意力がなくなり、集中しづらくなります。
計算ミスなどのケアレスミスや文章問題の読み間違いでの不正解などにつながります。
②論理的思考力低下
論理的思考には大脳皮質内の前頭連合野を使用します。
その機能が低下すると物事を論理的に考えるのが困難になり、思考スピードが落ち学習効率の低下を招きます。
③意欲低下
日中に使用した脳には老廃物が蓄積しています。
睡眠不足では蓄積した老廃物をしっかりと掃除できないので、体が重くやる気がなくなります。
④自己評価低下
人間の感情や記憶の器官は大脳辺縁系にある扁桃体です。
睡眠不足では扁桃体が正常に機能しなくなるため、物事を後ろ向きに捉えがちになり、イライラやゆううつ感が起こりやすくなります。
適度な睡眠ってどのくらい?眠るときのポイントは?
適度な睡眠時間
「基礎講座 睡眠改善学」(監修 白川修一郎、編集 日本睡眠改善協議会)によると、小学生の学力は睡眠時間が長く取れている子ほど成績がいいというデータがあります。
国語、算数、理科、社会の主要4教科のテストの平均点が95点以上の子の就寝時刻は、9時前41%、9時台28%、10時台22%、11時台14%、12時台0%。就寝時刻が遅くなるほど平均点が低くなることもあるようです。
睡眠時間が長い方が学習にはいいようですが、長すぎても効果が上がることはなく一定のところでその効果は停滞します。
レム睡眠とノンレム睡眠の1セットは90~120分間隔で、睡眠中数回繰り返されます。その時間間隔を加味して適度な睡眠時間を考えると、8~10時間未満が適切でしょう。
小学生であれば平均起床時刻は6~7時なので、夜8~9時には就寝するのが理想的です。
中高校生で睡眠時間が短いお子さまでも、脳の成長ホルモンが出やすいとされる22時~翌2時ごろを含んだ睡眠時間を設定するのが望ましいと考えられています。
体調や年齢に合った睡眠時間
理想的な睡眠時間はありますが、人それぞれ体調や年齢によっても必要な睡眠時間は違います。
先にご紹介した「基礎講座 睡眠改善学」に心身疲労状態のアンケートがあります。
小学生が自覚している疲労症状で最も多かったのが、「あくびが出る」。
次いで「眠い」「横になりたい」「目が疲れる」「ちょっとしたことを思い出せない」。
他には「きちんとしていられない」「物事が気にかかる」「イライラする」など、精神的な面の自覚症状もありました。
自覚症状の原因は適度な睡眠が取れていないことで間違いないでしょう。
脳は人間の器官で最もエネルギー消費が激しく、筋肉の約4倍も消費しています。使用すれば熱を持ちます。
睡眠には体温を下げる機能があり、その機能を使って脳の熱を下げます。
使ったままケアしないでいれば、脳は正常に稼働しなくなり疲れが残りやすくなります。
年齢によって必要睡眠時間は異なりますが、自覚症状が出たら速やかに休息を取り、睡眠時間を確保することを強くおすすめします。
質の良い睡眠のために
睡眠時間は確かに重要ですが、ただ時間を確保すればいいというものではなく、睡眠の質もとても重要です。
効率よくノンレム睡眠に入り、レム睡眠へ移行させることで、脳の疲労を軽減し、起床後の記憶力・集中力が高まります。
寝ると決めたらイスなどで眠らず、短時間の仮眠であっても布団に入って休みましょう。締めつけのないリラックスできる服装が望ましいです。
体温が下がると眠りやすくなるので、就寝前のお風呂の温度は40度くらいのぬるめにし、就寝する少なくとも1時間前、できれば3時間前には入浴を済ませるようにしましょう。
パソコンやスマホから発せられるブルーライトには、睡眠をうながすメラトニンを抑制し、脳を覚醒させる作用があるので、就寝1時間前には使用を終えておきます。
ホットミルクにはメラトニンの生成を助ける物質が含まれていますし、カフェインのないハーブティーなどを飲むのも、脳をリラックスさせ副交感神経を優位にするため、睡眠導入に効果的です。
少量をゆっくり飲むことでリラックス効果が高まります。
就寝前、起床後の勉強はどうする?
世間には朝型、夜型というタイプ分けが聞かれますが、最も効率よく勉強するには、睡眠のタイミングや個人のタイプによって勉強時間を設定することが大切です。
ただし、睡眠のタイミングで勉強する種類を変えれば、効率よく記憶したり理解をすることが可能です。
起きた直後に向いているのは、算数や数学などのひらめきを必要とする教科です。
問題に目を通してから就寝するとすでに知っている・記憶している情報と結びつくので、発想力が高まります。
夕食前の空腹時は、最も脳が活性化していて記憶機能も優れている時間帯です。
本日中にやらなければならない課題は夕食前に済ませておきましょう。
入眠後の深いノンレム睡眠を行った後の「レム睡眠」には新たな記憶をインプットする働きがあるので、就寝前は暗記科目に最適です。
情報をできるだけ叩き込んでスパッと眠れば、暗記効率が上がる可能性があります。(ただしスマホやパソコンを使った学習は避けましょう!)
科学的見地から効率よく勉強するための時間帯について説明した「勉強に効率のいい時間帯は?勉強にゴールデンタイムってあるの?」もぜひご参考ください!
勉強と睡眠の関係を知って、効率の良い学習を!
睡眠は学習面においても健康面においても、とても大切なものです。
適度な睡眠が取れなかった場合、集中力、論理的思考力、意欲、自己評価が低下します。
睡眠中の脳の働きはレム睡眠、ノンレム睡眠1セットの中で、それぞれで重要な働きをしています。
その働きを上手く利用して学習することで効率良く学習が行えます。
以下がポイントです。
・イスなどで寝ず、布団でしっかりと休む
・お風呂は40度くらいのぬるめにし、就寝前の少なくとも1時間前までには入浴を済ませる
・就寝1時間前にはブルーライトに当たらない(パソコン、スマホ)
・起床直後は算数や数学に適している「ひらめきタイム」
・夕食前は課題宿題に最適の「脳の活性化タイム」
・就寝1時間前は暗記の「ゴールデンタイム」
まずはお子さまの睡眠タイプ、特性を把握することから始めましょう。
睡眠時間や学習のタイミングを調節できれば、お子さまの学習意欲も高まり成績アップにつながることでしょう。
お子さまに合わせた家庭学習のご相談は、家庭教師のファミリーへお気軽にお問い合わせください!
著者小林 大介

お子さまのやる気アップならおまかせ!元気で明るい彼にやる気を引き出されて入会する生徒多数。スポーツ全般・特にサッカーが好きで、休日は少年団でサッカーを教える一面も。